『ハムレット』 2月9日マチネ@クリエ
2012年 02月 13日
久しぶりのTheatergoingです。
でも、肝心の話に行く前にちょっと寄り道するかも(笑)。
いつものランチ話ではなく、昨年末から少しずつ読み進めていて、先週やっと読み終えた本の話。
The Wednesday Wars
と言う、残念ながら日本ではまだ翻訳されていない児童文学作品を読んでいました。
あらすじはこんな感じ↓
1967年のアメリカ(ベトナム戦争時)が舞台の話で、Holling Hoodhoodロングアイランドに両親と高校生の姉と暮らしている7年生だから日本で言う中1の少年が主人公。
年齢的に色々なことを抱えるお年頃なんだけど、彼の場合はどうも人一倍いろんなことを抱えているらしい。
建築業を営む彼の父は仕事には熱心だけど、子どもたちへの関心はどうも今一つだし、お母さんも話を聞いているようだけど……そして高校生のお姉ちゃんはフラワーチルドレンにシンパシーを強く感じ、父親を神経を逆なでしている。
そんな家の中だけでも十分ため息が出る日々だけど学校生活でも次々と問題が起こる。なかでも一番のHolling の問題は、水曜日の午後は一人で担任のMrs. Bakerと教室で過ごさなければならないこと。しかも9月に新学期が始まった時、Holling は何故か新しい担任のMrs. Bakerは自分を嫌っていると思い込む。
かくして水曜日の午後は彼にとって最大の苦痛の時間になるのだが、ある時、Mrs. BakerはHolling が思うところ、彼を「退屈死」させようと、シェークスピアの戯曲を読むように指示するのだ。
しかしHollingの言うところのMrs. Bakerの思惑は大きく外れて、彼はすっかりシェークスピアに嵌っていくのだった。
物語は1カ月ごとに章になっていて、10月の『ベニスの商人』に始まって、ほぼ1カ月にひと作品のペースで読んで行きます。
その間、学校や家でいろんな問題が起こるのだけど、それがどこかその月に読んでいる作品にリンクしていたりするし、セリフの引用も沢山出てきます。
ミュージカル『ハムレット』を見に出掛ける電車の中でもこの本の続きを読んでいました。
そして、ちょうど読んでいた場面がHollingがついに『ハムレット』を読み始めたところでした。
Hoodhood家の問題もますます深刻になって行くなかで、Hollingはなかなか『ハムレット』にだけ集中できない様子。
ハムレットとポローニアスはしゃべりすぎだから、退屈なセリフは飛ばして読む!と言う暴挙にでたところでした。
ってことで、ええ、舞台を見ていてポローニアス(山路和弘)が出てくると、つい笑いたくなってしまいました。
だった、本当に良く喋って(歌って)いたもの。確かに口数が多い!
一方、我らがハムレット(井上芳雄)は思ったよりしゃべって(歌って)いない印象を受けました。
なにぶん、普通に上演されたら3時間は超えるし、随分とシェークスピアの世界に理解とシンパシーを感じだしていたHollingさえも読み飛ばしたくなるほどの大作『ハムレット』を2時間に満たないコンパクトに詰め込んでいるのだもの。
実際はハムレットは沢山歌っていましたが、ポローニアスと違って「しゃべりすぎ!」とは思わないで済む程度。
もちろんポローニアスは「しゃべりすぎ!」と思われてこその役なわけだけど。
それにしてもガードルートの涼風真世はすごかった。
白くてなめらかなデコルデと背中を惜しげなく見せているんだけど、それが緋色の衣装に映えて、本当に色っぽい。体のラインも年齢を全く感じさせない美しさで、それはそれはクローディアスも国だけではなく、この人のことも兄から奪わないと気が済まなかったのだろう、と思わず納得。
伊礼彼方のレアティーズはとってもアツイお兄ちゃん(笑)。
どんだけシスコンなんだ!って勢いで妹を心配している姿がなんともカントも。
墓場でハムレットとオフィーリアの遺体を奪い合うシーンは迫力すぎて、妹と言うよりも恋人を取り返そうとしているようにしか見えない。
誰か大岡裁きをしないとちぎれちゃうよ!って思うほどの迫力でした。
そしてその二人の男性にアツく取り合われたオフィーリアは新人の昆夏美。
小柄で少女そのものの彼女は歌はとてもパワフル。アツイお兄ちゃんレアティーズとのデュエットも全然負けてないし、芳雄くんとのデュエットも伸び伸びとしていて良かったです。
でもあまりに少女少女なのでハムレットに「尼寺へ行け!」と迫力で言われているシーンはこれだけでも気が変になっちゃいそう!といたたまれない気分になりましたが……
いや、本当に「尼寺へ行け!」のシーンはその勢いと迫力でこっちがドキドキして、辛く悲しくなっちゃいました。
楽曲的に好きだったのは、旅一座とハムレット、ホレーショーのコーラスのところとハムレットと墓掘りとホレーショーの3人で歌うシーン。
後者は振りも楽しかったので、その前後のとても悲しいシーンを一瞬忘れさせてくれるし、ふと思い出した時に余計に悲しくなるしのいいシーンだし、曲も楽しかった。それとここでのやり取りはいかにもシェークスピアってセリフを残しているシーンの一つで、セリフそのものも面白かった。
ともかく、何と言ってもあの『ハムレット』を正味2時間切るコンパクトにまとめたので、あっという間に話が駆け抜けていく。
父のゴーストの出番も少ないし、兵士の噂にも上らない。
なにより最後をしめるはずのフォーティンブラスも登場しない!!
そのせいで、実はラストのシーンでちょっと困った気分になります。
えっ?それでデンマークと言う国はどうなってしまうの?って
もちろん隣国ノルウェーの王子フォーティンブラスに国を任せてしまうと言う元々のエンディングも実に簡単には納得できないんだけど、それでも一応ハムレットは最後に王族として国と民が主を失いバラバラになることだけは避ける責任を果たしている。
でも、このハムレットは
国家に関する遺言は何一つないって……
国家と民はどうするんだぁ?
と思いっきりクエッションマークでお話が終わってしまいました。
これって私の文学センスのなさのせいかとも思ったんだけど、今回同行した友人(私よりは断然文学センスあり!)も同じように感じたらしいから、きっと他にもそこが気になった人はいるに違いないと思ってます。
でも、肝心の話に行く前にちょっと寄り道するかも(笑)。
いつものランチ話ではなく、昨年末から少しずつ読み進めていて、先週やっと読み終えた本の話。
The Wednesday Wars
と言う、残念ながら日本ではまだ翻訳されていない児童文学作品を読んでいました。
あらすじはこんな感じ↓
1967年のアメリカ(ベトナム戦争時)が舞台の話で、Holling Hoodhoodロングアイランドに両親と高校生の姉と暮らしている7年生だから日本で言う中1の少年が主人公。
年齢的に色々なことを抱えるお年頃なんだけど、彼の場合はどうも人一倍いろんなことを抱えているらしい。
建築業を営む彼の父は仕事には熱心だけど、子どもたちへの関心はどうも今一つだし、お母さんも話を聞いているようだけど……そして高校生のお姉ちゃんはフラワーチルドレンにシンパシーを強く感じ、父親を神経を逆なでしている。
そんな家の中だけでも十分ため息が出る日々だけど学校生活でも次々と問題が起こる。なかでも一番のHolling の問題は、水曜日の午後は一人で担任のMrs. Bakerと教室で過ごさなければならないこと。しかも9月に新学期が始まった時、Holling は何故か新しい担任のMrs. Bakerは自分を嫌っていると思い込む。
かくして水曜日の午後は彼にとって最大の苦痛の時間になるのだが、ある時、Mrs. BakerはHolling が思うところ、彼を「退屈死」させようと、シェークスピアの戯曲を読むように指示するのだ。
しかしHollingの言うところのMrs. Bakerの思惑は大きく外れて、彼はすっかりシェークスピアに嵌っていくのだった。
物語は1カ月ごとに章になっていて、10月の『ベニスの商人』に始まって、ほぼ1カ月にひと作品のペースで読んで行きます。
その間、学校や家でいろんな問題が起こるのだけど、それがどこかその月に読んでいる作品にリンクしていたりするし、セリフの引用も沢山出てきます。
ミュージカル『ハムレット』を見に出掛ける電車の中でもこの本の続きを読んでいました。
そして、ちょうど読んでいた場面がHollingがついに『ハムレット』を読み始めたところでした。
Hoodhood家の問題もますます深刻になって行くなかで、Hollingはなかなか『ハムレット』にだけ集中できない様子。
ハムレットとポローニアスはしゃべりすぎだから、退屈なセリフは飛ばして読む!と言う暴挙にでたところでした。
ってことで、ええ、舞台を見ていてポローニアス(山路和弘)が出てくると、つい笑いたくなってしまいました。
だった、本当に良く喋って(歌って)いたもの。確かに口数が多い!
一方、我らがハムレット(井上芳雄)は思ったよりしゃべって(歌って)いない印象を受けました。
なにぶん、普通に上演されたら3時間は超えるし、随分とシェークスピアの世界に理解とシンパシーを感じだしていたHollingさえも読み飛ばしたくなるほどの大作『ハムレット』を2時間に満たないコンパクトに詰め込んでいるのだもの。
実際はハムレットは沢山歌っていましたが、ポローニアスと違って「しゃべりすぎ!」とは思わないで済む程度。
もちろんポローニアスは「しゃべりすぎ!」と思われてこその役なわけだけど。
それにしてもガードルートの涼風真世はすごかった。
白くてなめらかなデコルデと背中を惜しげなく見せているんだけど、それが緋色の衣装に映えて、本当に色っぽい。体のラインも年齢を全く感じさせない美しさで、それはそれはクローディアスも国だけではなく、この人のことも兄から奪わないと気が済まなかったのだろう、と思わず納得。
伊礼彼方のレアティーズはとってもアツイお兄ちゃん(笑)。
どんだけシスコンなんだ!って勢いで妹を心配している姿がなんともカントも。
墓場でハムレットとオフィーリアの遺体を奪い合うシーンは迫力すぎて、妹と言うよりも恋人を取り返そうとしているようにしか見えない。
誰か大岡裁きをしないとちぎれちゃうよ!って思うほどの迫力でした。
そしてその二人の男性にアツく取り合われたオフィーリアは新人の昆夏美。
小柄で少女そのものの彼女は歌はとてもパワフル。アツイお兄ちゃんレアティーズとのデュエットも全然負けてないし、芳雄くんとのデュエットも伸び伸びとしていて良かったです。
でもあまりに少女少女なのでハムレットに「尼寺へ行け!」と迫力で言われているシーンはこれだけでも気が変になっちゃいそう!といたたまれない気分になりましたが……
いや、本当に「尼寺へ行け!」のシーンはその勢いと迫力でこっちがドキドキして、辛く悲しくなっちゃいました。
楽曲的に好きだったのは、旅一座とハムレット、ホレーショーのコーラスのところとハムレットと墓掘りとホレーショーの3人で歌うシーン。
後者は振りも楽しかったので、その前後のとても悲しいシーンを一瞬忘れさせてくれるし、ふと思い出した時に余計に悲しくなるしのいいシーンだし、曲も楽しかった。それとここでのやり取りはいかにもシェークスピアってセリフを残しているシーンの一つで、セリフそのものも面白かった。
ともかく、何と言ってもあの『ハムレット』を正味2時間切るコンパクトにまとめたので、あっという間に話が駆け抜けていく。
父のゴーストの出番も少ないし、兵士の噂にも上らない。
なにより最後をしめるはずのフォーティンブラスも登場しない!!
そのせいで、実はラストのシーンでちょっと困った気分になります。
えっ?それでデンマークと言う国はどうなってしまうの?って
もちろん隣国ノルウェーの王子フォーティンブラスに国を任せてしまうと言う元々のエンディングも実に簡単には納得できないんだけど、それでも一応ハムレットは最後に王族として国と民が主を失いバラバラになることだけは避ける責任を果たしている。
でも、このハムレットは
国家に関する遺言は何一つないって……
国家と民はどうするんだぁ?
と思いっきりクエッションマークでお話が終わってしまいました。
これって私の文学センスのなさのせいかとも思ったんだけど、今回同行した友人(私よりは断然文学センスあり!)も同じように感じたらしいから、きっと他にもそこが気になった人はいるに違いないと思ってます。
by a_bear_in_woods
| 2012-02-13 18:18
| Theatergoing