もりのくまの”M's Grab Bag”が「くまの雑記帳」で再出発。観劇記録、コンサートの記録、おいしいもの記録が中心の雑記帳です。


by a_bear_in_woods
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『組曲虐殺』12月24日マチネ@銀河劇場

今年の観劇納めとなりました。

井上ひさしさんの遺作となった2009年初演のお芝居を初演と同じキャストで再演しているものです。
初演の時の感想はこちら

初演の時は3回も観に行ったんだぁ……良かったなぁ、あの頃。
今じゃ、時間がとれずに今回は1回きり。

結論から言うと、前回の3回は気持ち的には多かったかな?って思ってたんだけど、今回の1回はもう1回は見たかった、って感じです。

実際、24日にCDを購入して来たのですが、まずはそのCDを聞き、そして昨日は購入してからずっと手つかずだったDVDを再生してみていました。

プロレタリアや赤の地下活動とかは相変わらずわかることはできない世界だと思うけど、でも、今回は作品と舞台の上で生きていた登場人物たちにはかなり気持ちを持って行かれました。

まずは芳雄くんが演じた小林多喜二。
今回の多喜二はどこかルヴォー演出の『ルドルフ』のルドルフに似ていました。
たぶん「革命家」であること、弱者に寄り添いたいと思って生きていることが通じているからかもしれません。

そして、ルヴォーのルドルフと同様に、舞台の上に居るのは特別な人間(皇太子だったり、特高に目の敵にされるほどの活動家だったり)ではなく、等身大に本当に生きている青年でした。
ただ、熱い思いのたけを隠すことが出来ず、むしろ持てあましてさえいるような、そんな青年が「生きて」目の前に居る、そんな感じでした。(すっごく前方のお席だったからかもしれません。端っこだったけど)

もちろん、いろんな部分で笑いと涙を誘われたのは初演同様でしたが、今回、私が胸をキュンと〆つけられたのは瀧子の石原さとみさんの佇まいと表情でした。
変わらずに清純な雰囲気なのですが、初演に比べてご本人も大人になったからなのかもしれませんが、色気が感じられたのです。

ふじ子へのジェラシーを表すシーンで、初演の時は何だかんだで、でもそこは「お兄さん」てき思いが強いんじゃないかな?って感じだったのですが、今回は黙って立っていたりするだけのシーンでも、女として多喜二をあきらめきれない、でも、仕方が無い、という嫉妬や葛藤が色気を伴って伝わって来ました。

大きく動いたり、セリフを言っていないシーンでもふと彼女に視線をもって行かれる、そんな感じ。
「ふじ子が、ふじ子は……呼び捨てって良いなぁ~」のシーンでは彼女がそのセリフを出す前に、多喜二が「ふじ子」と言うたびに、こちらの胸が苦しくなって、切なくなって……あ~、多喜二、なんて女心が判らない朴念仁か、と舞台の上の芳雄くんを睨みつけたくなるほど(笑)。

特高として追う側も、そして追われて、やがては命を奪われる側も、そして奪った側も、所詮は雇われの身で、労働者の一人でしかない。
働く人の全てが正当な評価を受けて、正当な扱いを受けて、日々の糧を十分に手にし、暖かで清潔な寝場所と衣服があること、それを望むことはそんなに罪なことなのか?

そして、今、いったいその権利はちゃんと本当に誰もが持っているのだろうか?

でも、誰もが持っていて、誰もが奪えない物があるとしたら、それは「胸の映写機」なのだと感じたクリスマスイブの観劇納めでした。
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by a_bear_in_woods | 2012-12-28 10:56 | Theatergoing